しんぶん赤旗 2002/10/16付記事

けいざい そもそも ワールド/外形標準課税ってなに?」 

 こんな不景気なのに、小泉内閣は、大企業に税金をまけるために、国民や中小企業への増税をねらっています。法人事業税に外形標準課税を導入するのもその一つ。聞きなれない外形標準課税というのはどんな税金なのか?(石井光次郎記者)都道府県に入る税金 まず、だれにかかる税金かです。

 法人税や所得税は国の“金庫”に入る国税です。問題の法人事業税は都道府県に入る地方税です。その都道府県で事業をおこなう会社(法人)が納税します。

 会社といっても千差万別。行政サービスをどれだけ受けているかを会社ごとに計算するのは不可能です。だれでも納得できる公正な課税にするには、税金を納める能力(担税力)に着目した課税(応能課税)の仕方になります。いまの法人事業税は、会社の所得を基準に5~9・6%の税率で税額を決めています。所得のない赤字企業は課税されません。法人決算書を基準に ところが、「行政サービスで利益を受けているから赤字法人も払え」、「税の空洞化はけしからん」といいだしたのが小泉内閣です。利益に応じて(応益課税)といっても、受ける利益の計算もできないのに、厚かましい話です。赤字法人にも税金を払わせるために、いったいどんな仕組みを考えたのでしょうか。

 「外形標準課税」というのは、「建物の面積や従業員数など、外観からわかるものを基準にして税額を決める課税方法」といわれます。税金を払う能力ではなく、建物が大きいか、小さいか、従業員が多いか、少ないかを基準にするということのようです。

 昔は窓の数や間口の広さなど文字どおり外観を基準にしていました。会社経理が整備された今は、「外観からわかるというより、法人の決算書をみれば、すぐ把握できる数字を基準にするというほうがわかりやすいかもしれません」と税理士の関本秀治さんが話してくれました。

 外形標準課税の具体案を出している総務省の都道府県税課で聞いてみると…。「所得(六分の三)と付加価値(六分の二)、それに資本金(六分の一)を課税標準にします」という説明。

 「付加価値(給与、支払い利子、賃借料、損益)」と「資本金」は赤字でも黒字でも事業をしていれば必ずあります。それを基準に税をかければ、赤字企業からも税金を取れるという寸法です。赤字企業7400億円増税 どんな影響がでるのでしょうか。UFJ総合研究所の村田雅志さんは政府の統計を使って独自の試算をしています。それによると、企業の収益が変わらなければ、赤字企業は全体の税額の約16%、七千四百億円の新たな負担です。

 「それに、付加価値のうち、企業の人件費が約八割で、労働集約型は増税要因です。長期的に税収中立といいますが、企業の所得が落ち込んでいる時には増税になります。いまのような時期に導入するには、影響を考えるべきでしょう」と話してくれました。

 日本商工会議所は加盟法人の調査をしています。全産業ベースで平均約四百六十二万円の増税。赤字法人は100%、黒字法人でも83%が増税です。全体では約六千億円の負担増です。しかも従業員が少ないほど負担は大きく、三十人以下では半数近くがいまの三倍以上の負担になります。同会議所の産業政策部副部長、山田光良さんはいいます。「応益課税といっても、担税力があるところからとるべきです。こんな税金は雇用や海外競争力の観点からみてもマイナスです。見直しなどではなく阻止しなければいけません」